従来型インバータと本件特許の力率改善効果
2001.12.10
株式会社テクノリウム 代表取締役 牛嶋昌和
1.従来型インバータの動作点は-90degの誘導性である
写真4-1及び写真4-2に閉磁路トランスを用いた従来型インバータの写真を示す。
また、このインバータのトランスの一次側から見たアドミタンス・位相特性を図4-1に示す。
図4-2は甲17号証のものと同じである。比較のため引用した。
写真4-1 従来型インバータ |
写真4-2 クローズアップ |
この従来型インバータは閉磁路トランスを用いているため、管電流安定化のためのバラストコンデンサが必須となっている。
写真4-2の青い部品がバラストコンデンサである。
このインバータのトランスの一次側から見たアドミタンス・位相特性を図4-1を見ると、このインバータの動作点周波数20KHzにおける位相特性は約-85.3degとなっており、かなりの誘導性である。
力率を計算すると、より、 となり、かなり力率が悪い。
図4-1 旧型インバータの|Y|・θ特性 |
図4-2 本件特許の力率改善効果 |
一方、甲17号証のインバータの場合、動作周波数55KHzにおける力率は、
より、であり、従来型インバータの力率と比べると相当な改善効果が得られている。
2.本件特許明細書との関係
本件特許の特徴の一つは直列共振点近傍に生じる力率の改善効果を利用することにある。(明細書【0021】また、容量成分と誘導成分が打ち消しあうので力率が改善され、その結果、昇圧トランスの一次側に流れる無効電流が少なくなるため、銅損による損失が少なくなりインバータ回路の効率が向上する。)
ここでいう力率の改善とは位相が0degになることを意味しない。
従来型インバータが-90deg付近で動作させるのに比べて、本件特許では-90degよりも相対的に0degに近い動作点で動作させることにより相当な効果が期待されるものである。
具体的には例えば-60degにおける力率は0.5であるから一次巻線に流れる励磁電流が半分になっていることを意味する。
これは十分な発熱低減と変換効率の改善効果があることを意味する。
このような力率改善効果は並列共振点と直列共振点との間に生じるので、本件特許はその改善効果が生じる範囲でインバータを使用することを示している。
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