わが社の通信事業 通信事業というのは仕入れの資本がかからない分、成功すれば収益性が非常に高い。 ゆえに急成長が見込める。 これが現在のITベンチャー企業ブームにつながっているわけだが、通信事業には非常に危険な側面がある。 それは、一部の企業の思惑とか政治的情勢などで通信を取り巻く環境が、ある日突然に変化することにある。 法律一つ、契約一つ変わるだけで事業の根本的基盤が崩れることもあるということである。 私はダイヤルQ2を通じて早い時期にその危険性を経験した。 通常の事業というものは開かれた経済における自由競争によって事業の成功不成功が決まるものである。 一般的常識として、自由競争に負けた結果として事業が成りたたなくなったとしても、これはしかたがないことである。 しかし、電気通信事業というものはちがう。 少なくとも当時の電気通信事業は大きく違っていた。 たとえ収益性、社会性ともに優秀なサービスであったとしてもだ。 大企業の都合一つで突然に断念せざるを得なくなることもあるというものなのだ。 (いや、社会性、収益性がありすぎたからこそ、一担当者に嫉まれたのかも知れない) 自分の正当な競争力ではどうにもならない力が、あるとき自分の都合で勝手にルールを変える。 そういうことがあるというのが通信事業の最も危険な部分だと認識すべきだろう。 1.追いかけ電話とハチ公ダイヤル待ち合わせコール
お客様に受け入れられ、かなりの収益が得られた事業だ。 だが、ある日突然にNTTから止めるようにとの指示があった。 理由を聞くと一対一の会話は全てサービスを止める方針が決まったというのであるが・・・・・・ ツーショットが社会的に問題があるというNTT。しかし矛盾がある。 一対一の会話が全て倫理上問題があるというのなら、格安の国際電話は?インターネット電話は?格安長距離電話は?皆だめなのか。 NTTの答えは皆Noであった。 2.NTTの言い分は不特定多数の使う一対一は皆だめだという それでは電気通信事業そのものはだめだということになる。 無理が通れば道理が引っ込むというか、ダイヤルQ2の混乱に巻き込まれたとはいえ、電話事業の根本を否定するNTTの言い分には何か非常に不自然なものがあった。 3.しかし本音は自分で事業を行う予定だったから? 追いかけ電話は数あるダイヤルQ2サービスの中で唯一まともな事業で収益を上げたサービスであった。 当時は携帯電話も普及していなかったし、迷惑電話お断りサービスも普及していなかった時代である。 利用者の大半は追いかけ電話の転送機能と電話をかけられた側のプライバシーを守れる機能に魅力を感じての利用だった。 この事業は大ヒットした。 NTTは自分の事業の収益に影響が出ることを心配して我々の事業を止めたと推測される。 さらに我々はISDNが普及することも視野に入れ、発信者番号告知サービスをフルに利用して追いかけ電話の所在地登録を大幅に簡略化するシステムの準備もしていたのだ。 やはり我々から遅れること4年、NTTも同じ事を考えていたことがわかる。 PHSにはISDN網が使われていることは電話に詳しい人なら誰でも知っていることである。 日本テレシス版追いかけ電話との類似性を穴のあくほど良く見比べていただきたい。 4.ハチ公ダイヤルは不特定多数という言葉に翻弄された 不特定多数という言葉にこだわるNTT。 なぜ倫理的に問題ない国際電話までだめなのか。 それは不特定多数の人が使うからなのだそうである。 どういう意味だ? NTTの倫理審査委員会(正確にはNTTの嘱託で審査を行う全日本テレホンサービス協会倫理委員会)というのが、これがまた烏合の衆の寄せ集めで、法理論などという高尚な検討が全く出来ない。 ただ単に問題が起きないようにと保身するだけの人間の寄せ集めである。 ではなぜ、ハチ公ダイヤルは倫理的に問題なのだ?! 5.ハチ公ダイヤルは電話会議システムである 老若男女が自由に会話するところであって、決して男女専用のツーショットダイヤルではない。 インターネットのチャットと何ら変わりはないのだ。 NTTの倫理審査委員会のばかさ加減は、後に検察庁が法案を提出した改正風俗営業法の条文により立証されることになった。 改正風俗営業法では電気通信事業のうち、問題になるものを 「専ら男女の出会いの場を提供し・・・・」と定義した。 検察はやはり法律の専門家だ。偉い。 納得できる。 この条文では見事に問題のある電気通信事業とそうでないものを振り分けることが出来たのである。
だれがどう見たって検察の分類の方が明確で納得できる。 NTTの分類は見れば見るほどバカさ加減が露呈している。 結局NTTは現在に至るまで意地を張ったままである。 未だに電話会議をアダルトに分類してしまった非を認めようとしていない。 ダイヤルQ2が高額料金で社会問題化する中、真面目に電気通信事業に取り組もうとした者にまで刃を向けるNTTにはただあきれるばかりである。 そういえば、NTT-MEはインターネット電話も始めるみたいである。やっぱね ・・・(-_-) 6.日本から通信ベンチャービジネスは育つのか? 我々が追いかけ電話サービスを提供しようとしたのは1991年から1992年にかけてであった。 やはり時代は早すぎたのだろうか。 1997年のSun Microsystems, Inc. のページを参照してみてほしい。 ここに我々が目指した基本構想、概念とも全く同じものが「インテリジェント・ネットワーク」という名称で書かれている。
インテリジェント・ネットワークFollow Me (追いかけ電話) 同じものが米国では成功し、日本ではその芽が摘み取られてしまった。 日本にだってベンチャービジネスの芽はあるのだ。 しかしそれを本気になって育てる気がないのであれば、日本発の世界的ベンチャー企業登場の夢などいつまでたっても実現されないままだ(-_-) |
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