いわゆる磁界共振(Magnetic Resonance Coupling)とは、送電コイルと受電コイルが同じ周波数で共鳴することで、コイル間で効率的にエネルギーを伝送する技術だと説明されています。この共鳴状態により、送受電コイル間の距離がある程度離れていても、非接触で電力伝送が可能になるというのが通説です。特に、結合係数が低い(コイル間距離が長い)場合でも、共鳴が成立することでエネルギーが効率的に伝わると言われています。
一方、磁界調相結合(Magnetic Phase Synchronous Coupling)は、送電コイルと受電コイルの磁束の位相が同期し、磁束の方向が一致することで生じる結合現象です。この位相が同期した状態では、送電コイルと受電コイルの磁束の向きとタイミングが揃うため、電力の伝送効率が大幅に向上します。磁束の位相がズレると、エネルギーが効率的に伝わらず、結合が弱くなってしまうため、この「位相の一致」が重要な要素となります。
磁界共振を磁界に着眼して分析すると、その本質が磁界調相結合に依存していることがわかります。特に、コイル間距離が離れて結合係数が低い場合、効率的な電力伝送を実現するためには、送電コイルと受電コイルの磁束が位相的に完全に同期している必要があります。
この位相の一致によって、コイル間の結合が強化され、エネルギー伝送が可能となるのです。すなわち、共鳴状態が成り立つためには周波数が一致しているだけでなく、磁束の位相も一致している必要があり、この状態が「磁界調相結合」と呼ばれるものです。
具体的に言うと、共鳴状態では、送電コイルの磁束が発生するタイミングと位相が受電コイルの磁束と同期し、相互に引き合う力を発生させます。この引き合う力が、コイル間の結合を維持し、磁界共振が機能するための基盤となっています。そのため、磁界共振を実現するためには、磁界調相結合が不可欠であると言えます。
磁界共振の効率を最大限に引き出し、安定した電力伝送を行うためには、磁界調相結合を常に維持する必要があります。このために、位相同期技術(Phase Synchronization Technology)を活用して、送電コイルと受電コイルの磁束の位相をリアルタイムで監視し、ズレが発生した際には即座に補正を行います。この技術により、どのような状況でも磁束の位相が一致し、磁界調相結合が常に効果的に発生する状態を保つことができます。
磁界共振と磁界調相結合は密接に関連しており、特に結合係数が低い(コイル間の距離が遠い)場合には、磁界共振が成立するための本質的な要素として磁界調相結合が重要です。効率的な電力伝送を実現するためには、磁界共振の基盤として磁界調相結合が必要であり、それを補完するために位相同期技術を組み合わせることが求められます。このようにして、安定した高効率のワイヤレス給電が可能となります。
ワイヤレス電力伝送において、送電コイルと受電コイルの間の距離が近づくと、コイル間の結合係数が高くなり、磁界共振に双峰特性(デュアルピーク現象)が現れることがあります。双峰特性とは、共振周波数が分離して2つのピーク(疑似的な共振点)が現れる現象を指します。この双峰特性が生じると、送電側と受電側の共振状態が必ずしも一致しなくなり、結果的に「磁界調相結合」が成立しにくくなります。位相が同期しないために磁束の向きやタイミングが合わず、効率的なエネルギー伝送が妨げられます。
双峰特性が発生すると、送電コイルと受電コイルの共振周波数が異なる状態になることがあります。この状態では、送電側と受電側の磁束の位相が一致しにくく、共鳴による結合が弱まり、磁界調相結合が成立しなくなるため、電力伝送の効率が低下します。特に、コイル間距離が近いと、受電コイル側の共振周波数が高くなる現象があり、ますます位相の同期が難しくなります。
この双峰特性による効率低下を防ぐための対処法として、「送電側の共振を止める」という手段があります。送電側の共振を停止することで、双峰特性が解消され、システム全体として単一の共振状態に戻すことができます。この状態になると、受電側の共振周波数に合わせて位相同期が成立しやすくなり、結果として磁界調相結合が再び成立するようになります。これにより、コイル間の距離が近くても、送電コイルと受電コイルの磁束が同期し、高効率な電力伝送が実現できるようになります。
なぜこのような対処が効果的かというと、コイル間の距離が近いとき、受電コイル側の共振周波数が高くなる現象があるためです。距離が近い状態では、送電コイルと受電コイルの相互作用が強まり、受電コイル側の共振周波数が本来の共振周波数からシフトします。送電側の共振を停止することで、このシフトの影響をなくし、受電側の共振周波数に自然に追従するように制御することで、位相同期が容易に達成できるようになります。
以上をまとめると、コイル間距離が近い場合には以下のような対策が効果的です:
このようにして、コイル間の距離が近い場合においても、磁界共振が安定して磁界調相結合を実現できる仕組みが成り立つことになります。