第1 |
被告第1図ないし第4図について |
1 |
磁束分布図に関する被告の基本的な間違い |
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(1) |
被告はコアの形状と磁束分布概念の説明のための磁束図として被告準備書面(3)20頁以降に第1図ないし第4図を示す。 |
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しかし、これらの図は巻線に流れる電流を全く配慮していないという、きわめて基本的なミスを犯している。
おそらく被告は磁気シミュレーションというフェライトコア関係の解析ソフトを用いてこのシミュレーション結果を得たものであると思われる。
しかし、これらのソフトは原告が確認したところ、磁性体のみを単独でシミュレーションしているものが多く、現在のところ巻線に流れる電流を同時に考慮する磁気シミュレーションソフトは市販されていないか入手が非常に困難な状況にあるはずである。 |
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(2) |
被告は被告の示す磁気シミュレーションが正しいと主張するのであれば、原告と同じように非常に簡単な実証実験を行って、被告の磁気シミュレーションが実測と適合するのか示さなければ意味がない。 |
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なお、甲第16号証図2の(2)実測の措置図、あるいは甲17号証図7、さらに、「この実験の意味」として、原告が行った実証実験は、ファラデー・ノイマンの法則に基づくきわめて基本的な実測方法であることを原告が解説している。
被告は、この実測方法に関して否認することはファラデー・ノイマンの法則について否認することに等しいため否認できず、代わりに鰐口クリップを用いたことに対して批判しているが、それならば被告自身が適当とするように端子をはんだ付けするなりして被告準備書面(3)20頁以降の図1ないし図4に示す磁気性状の実証実験を行なえばよい。 |
2 |
磁気シミュレーションソフトの問題点 |
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次に、巻線に流れる電流を考慮できない磁気シミュレーションソフトを用いた場合に陥りやすい問題点について述べる。 |
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(1) |
まず、被告準備書面(3)第2図についての説明に「一次巻線は開放時」(原告本準備書面図1−1下線部)とあるが、そもそもが、インバータ回路をシミュレーションするならば一次巻線は短絡でなければならない。 |
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図1-1 |
大半の磁性材専用の磁気シミュレーションソフトではこういった巻線短絡時のシミュレーション機能は有していない。
一次巻線が短絡状態であると、磁束は一次巻線を流れる電流によって一次巻線に貫入できないか、あるいは貫入した磁束は一次巻線を貫かなければならない。
この磁気シミュレーション(赤線で示したもの)の間違いによってその後の第3図b、第4図bなどその後の全ての誤りにつながっている。
ちなみになぜ一次巻線は短絡でなければならないのかというと、概略を述べればそれは「交流的に短絡」されていることである。
図1−2は乙第7号証figure20から引用してきたMP-1010のICの出力部のトランジスタとこれに接続されるトランス、冷陰極管の回路図である。 |
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図1-2
乙第7号証figre20より |
図1-3
交流的等価回路 |
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ここに示されるトランジスタはスイッチング動作をするものであり(図1−3)、常に電源或いはGNDに接続されているか、どちらにも接続されていない場合はGND側のトランジスタ同士が導通して短絡状態になる。
電源およびGNDに接続されている場合のインピーダンスはいうまでもなく0Ωであるから、結局スイッチング動作における一次巻線は交流的には常に短絡状態にあるわけである。
これらのことは、スイッチング動作をする電源回路では常識的なことであるのでこれ以上の説明は要しないであろう。被告はこのようなきわめて基本的な事柄に関しても踏襲せずに主張を述べているのである。 |
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(2) |
図1-4
ソレノイドを通り抜ける磁束 |
原告は被告がこのような基本的な誤りを犯さないように、あらかじめ巻線を流れる電流によって生じる磁界は一様で平行磁界であると説明している文献を示した(甲第8号証133頁図6.5)。ソレノイドを説明した文献はいろいろとあるが、入門電気磁気学(ムイスリ出版社)に示されるものが最も現実的で詳細であろうと思われるので図1−4に示す。 |
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図1-5 |
分布定数性が無視できる場合、巻線のごく両端を除いて磁界は巻線を貫くものであり、基本的に巻線の途中から漏れ出すものではない。図1−5に示すように被告が被告準備書面(3)20頁以降の図1ないし図4に示すような巻線途中からの磁束漏れは、巻線が集中定数状としか見なせない一次巻線上ではあり得ないのである。したがって、示されるこれらの図は正しくは図1−6のように書き改められなければならない。
図1-6 一次巻線近傍の磁束 |
また、二次巻線上における磁束漏れが生じる現象については被告が述べる被告準備書面(3)第2図上で示されるような単純な磁気漏れでは決してない。
なぜならば、この図で示される磁束漏れは二次巻線に流れる電流による影響を全く配慮していない。二次巻線の分布定数性が無視できるとするならば、これらの図においても、磁束が二次巻線を貫くように示されていなければならないし、二次巻線に電流が流れつつ二次巻線上で磁束漏れが起きるのであればそれは二次巻線の分布定数性が無視できないからである。これは、二次巻線上の各部位ごとに二次巻線に流れる電流が異なっているということであり、一本の銅線上でそのようなことが起こるとすれば巻線間に存在する寄生容量(つまりは分布容量)を通じて電流が流れていることであり、すなわち分布定数状であることを意味するのである。
補足であるが、一次巻線は巻線数も少なく巻線間分布容量も少ないのでインバータの動作周波数(約60kHz)において分布定数性は無視できる。
これに比べ、二次巻線は巻数も多く巻線間分布容量も多いので、インバータの動作周波数(約60kHz)において分布定数性が無視できないのである。 |
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(3) |
図1−6を見れば明らかなように、外部コアが存在する場合とそうでない場合とを比べても、外部コアは中心コアの磁路から漏れ出した磁束の通路を形成しているだけに過ぎないのであり、外部コアのあるなしにかかわらず、中心コアを流れる磁束の性状(すなわち、一次巻線、二次巻線のそれぞれに鎖交する磁束の性状)に基本的な差はない。トランスの昇圧作用は一次巻線、二次巻線とそれに鎖交する磁束との相互作用が全てであるのだから、それ以外の部分(外部コア)の磁束がどうあろうと本質論には全然影響ないのである。 |
3 |
トランス運転時の磁束分布概念図 |
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なお、被告準備書面(3)第3図の下段に記載している説明は一般的なトランスの電力変換について記載したものに過ぎないのであるが、原告の技術の説明に資する点が記述されているので、この点について補足する。
これは、「一般に励磁磁束(主磁束)と負荷磁束(負荷に流れる電流により作られる磁束つまりは漏れ磁束と考えてよい)は負荷により電気的な位相が異なるが(つまり、抵抗性負荷により発生する負荷磁束は励磁磁束よりも90度遅れる)、一次巻線と二次巻線負荷電流による磁束は互いに逆向きになっている(二次側漏洩磁束と一次側漏洩磁束とは互いに逆向きになっている、つまり一次側漏洩磁束は主磁束よりも90度進んでいる)。」ということである。
ここで述べていることは、従来のトランスでは一次巻線下に発生する励磁磁束(主磁束)と負荷磁束(漏洩磁束)とをベクトル合成した場合、位相が90度ずれているのであるから合計した磁束の絶対値は必ず(わずかに)増える傾向にある。
しかし、本件特許技術の場合、原告準備書面4の17頁ないし19頁で説明したとおり、一次巻線近傍の磁束位相は二次巻線の一次巻線から遠端部の磁束位相よりも90度進んでいるのであるから一次巻線に発生する漏洩磁束(負荷磁束)は主磁束とちょうど逆位相となる。
したがって、主磁束と負荷磁束との合成磁束はわずかに減る傾向にあるという点で従来のトランスと異なるのである。 |
4 |
被告製品が漏洩磁束型であるということ |
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被告は被告準備書面(3)第3図d)において、「励磁磁束量よりも負荷磁束量が多いときは、磁束の主体は漏れ磁束になる」と述べているが、この記述をもって、被告は被告製品に使われているトランスが漏洩磁束型(従来の漏洩磁束型か本件特許の漏洩磁束型かは別として)であることを自ら認めている。そもそも閉磁路型(非漏洩磁束型)トランスというものはそのような条件下では使われないものなのである。この点は、被告準備書面(3)16頁(4)以降「念の為指摘すると、閉塞磁束型トランスは、絶対的な漏れ磁束量の少ないトランスを意味するものではない」という記載からも明らかである。
いずれにしても、被告製品のインバータに使われているトランスが漏洩磁束型であるという証拠は、当該記述以外にも多数既出しているので漏洩磁束型かそうでないかについての議論はもはや結論が出ているものと思われる。 |
第2 |
「第1 本件特許発明の要件解釈について」について |
1 |
本件特許発明の要件Aについて |
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(1) |
上記については、既に原告準備書面4、4頁ないし6頁において反論しており、被告準備書面(3)における新たな主張にのみ追加する。 |
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(2) |
被告は被告準備書面(3)第1図において、コアの形状が被告製品のOI型コア以外のEE型コアやEI型コアにおいても磁束の性状が同様になるということを述べているが、そもそも本件特許明細書に述べているEE型コアやEI型コアとは本特許出願当時(1993年8月)に存在していたJIS標準型かそれに近い形状のEE型コアやEI型コアである。 |
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JIS標準型EEコアやEIコアはコア断面積に比べて磁束の通り道(磁路)の長さがなるべく少なくなるように配慮されて設計されたものであり、EEコアやEIコアといえば磁束漏れが少ないものであるというのが当時の当業者の通念である。また、このことは本件特許明細書の中にも、「【0002】また、放電管用インバーター回路に用いられる昇圧トランスのコア形状は、磁束の漏れを効率上有害と捕らえる基本設計から閉磁路型、つまり、EI型或いはEE型が採用されることが多かった。」と述べているのであるから、本件特許に述べるEI型及びEE型コアとは磁束漏れの少ないコア構造に限定されることは明白である。すなわち、最近のように磁束漏れを意図してコア断面積に比べJIS標準型よりも極端に磁路の長さを長くしたものは、当時存在しなかったのである。本件特許発明における「連続した一本の棒状コア」は、この点から解釈しなければならない。
したがって、本件特許発明の構成要件上、被告製品のような形状の外部ロ字状コアは、単なる付加物に過ぎない。 |
2 |
本件特許発明の要件Dについて |
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上記中、結合係数については、既に、原告準備書面4、「第5 結合係数について」(43頁以降)で反論しているが、被告準備書面(3)に反論するため、これについては後述する。 |
3 |
本件特許発明の要件E1について |
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上記についても、既に、原告準備書面2、7頁ないし10頁、原告準備書面4、6頁ないし7頁について説明済みである。
上記についての被告の主張は、何ら新たな主張を含んでいない。 |
4 |
本件特許発明の要件E2について |
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上記のうち、寄生容量については、後述する。 |
5 |
本件特許発明の要件E3について |
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直列共振回路と直列共振周波数については、後述する。 |
第3 |
「第3 被告製品について」に対する反論 |
1 |
「1 被告製品の回路動作について」 |
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(1) |
被告は、被告製品の回路動作について縷縷説明を行い、被告製品においては直列共振周波数が46kHz程度であり、動作周波数が約62kHz〜約65kHzであるから、直列共振周波数よりもずっと高い周波数で動作させている旨主張する。 |
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更に、被告製品においては、高調波をカットするためにバンドパスフィルター回路を採用している旨主張する。
また、被告は、被告製品は放電管を液晶パネルから取り外し裸にし、寄生容量を取り除いても、インバータ回路は正常に動作するし、寄生容量があることにより余分な電力消費を発生している旨主張する。 |
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(2) |
しかし、被告の上述する主張は、それぞれ、誤りである。 |
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これらの誤りについては、その理由についても詳しく述べる必要があるので、個々の認否反論ではなく、後述する原告の反論に含めるものとする。 |
2 |
「2 本件特許発明の要件Aとの対比」 |
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(1) |
被告が主張する漏洩磁束を結合係数で表すという主張が誤りであることは、既に、原告準備書面4、「第5 結合係数について」(43頁以降)で反論しているが、被告準備書面(3)に反論するため、本準備書面後半において再度詳述する。 |
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そもそも漏洩磁束を結合係数で示すということが誤りである以上、結合係数の相違を根拠とする被告の主張は何ら意味を持たない。 |
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(2) |
なお、前述したとおり、被告製品の外部ロ字状コアは、中心コアからいったん漏洩した磁束を吸収するものにすぎない。中心コアから漏洩した後の磁束についてはトランスの昇圧作用や漏れインダクタンスの形成とは無関係であることは明白である。したがって、外部コアがあるなしにかかわらず、中心コアに流れる磁束の性状に大きな違いはない。 |
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トランスの昇圧作用は巻線と鎖交する磁束との相互作用で全てが決まるものであるから、巻線を貫通し、或いは途中で漏れ出した磁束がその後空気中を通ろうが外部コアに吸収されようが本質的な部分には何ら影響はない。
したがって、本件特許発明においては、外部ロ字状コアは何ら意味を有さず、単なる付加物に過ぎないのである。 |
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(3) |
被告は、EE型コア、EI型コア、被告製品コア及び棒状コアについての磁束の発生及び漏れの相違については、被告準備書面(3)添付第1図及び第2図を参照されたい旨主張しているが、そもそもこの図が誤りであることは、本準備書面第1にて述べたとおりである。 |
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更に、被告は、コアの組立形状により磁束分布の実質的差はないと主張しているが、これも誤りである。
既に述べたとおり、本件特許発明の出願(1993年8月)以前においては、EI型コアのTコアが被告準備書面(3)第1図記載のように長いものはなかったことも前述したとおりである。
本件特許発明においては、このように中心コアを長くする、すなわち、コア断面積に比べて磁路を長くしたために、ニ次巻線上から磁束が漏洩するという、「極端な漏洩磁束効果」が生じることになったものであり、従来のような中心コアが短いEI型EE型コアでは、このような磁束漏洩を形成する条件からは程遠かった。 |
3 |
「3 本件特許発明の要件C2との対比」に対する反論 |
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(1) |
被告は甲第17号証が要件C2の立証を果たしていない旨主張するが、これについての反論は、既に原告準備書面4、10頁、及び同書面13頁ないし24頁にて反論済みである。なお、被告において甲第17号証について新たに具体的な主張立証があれば、原告は当該主張立証に対し対処する予定である。 |
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(2) |
被告製品コアの磁束の漏れについては、上述のとおりである。 |
4 |
「5 本件特許発明の要件E1及びE2について」に対する反論 |
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(1) |
被告は、被告製品においては、放電管を液晶パネルから取り外し裸にし、寄生容量を取り除いても、インバータ回路は正常に動作する旨主張する。 |
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(2) |
しかし、上記主張は何ら数値的裏付けのない主張であり、インバータ回路が「正常」に動作するという点についても、どのような動作をもって「正常」であるかを主張していない。 |
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被告の上記主張に対しては、数値的裏付けのある主張及び証拠を求めるものである。具体的には、蛍光管にかかる電圧・電流を示し、電力も同時に計算して示すよう求める。 |
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(3) |
そもそも、被告製品はMP-1010用に設計されたトランスであり、あらかじめ放電管を液晶パネルに設置して寄生容量を利用することを念頭に入れて設計されているものである。 |
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したがって、この液晶パネルを取り外した場合には、予め設計に入れていた液晶パネルと放電管との寄生容量が少なくなるため、共振周波数が上がり、蛍光管が暗くなる。必然的に消費電力が下がるものであって、これにより効率が上がることはない。 |
5 |
「6 本件特許発明の要件E3との対比」に対する反論 |
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これについては、共振のところで、詳述する。 |
第4 |
共振回路と共振 |
1 |
被告の理論の誤り |
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(1) |
被告は、被告製品のインバータ回路は直列共振周波数よりかなり高い周波数に設定されているから、本件特許発明の要件に該当しない旨主張する。 |
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(2) |
しかし、被告の主張は、いずれも、共振回路と共振についての誤った理解により導かれているものである。以下、それについて詳述する。 |
2 |
共振回路が存在することとそれが共振することは異なる |
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(1) |
共振回路とそれが共振すること |
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本件特許においては、二次側の共振回路の存在が要件となっているが共振回路が存在しているということと、共振回路が存在し、かつ、それが共振していることとは異なる。
被告は共振回路が存在していることをもってインバータの動作周波数が自動的にその共振点で動作しなければいけないかのごとき誤解を持っていると思われるので、以下にその部分について説明を加える。 |
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(2) |
まず、被告は準備書面(3)9頁3行ないし4行において「共振回路は存在しない」と述べながらも5行以下では直列共振周波数の議論をしており、矛盾している。 |
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この部分は、「被告製品においては直列共振回路は存在するが、それは共振していない」と表現されるべきである。これは明らかに被告は、「共振回路が存在することが、すなわちその共振周波数で自動的にインバータが動作することを示す。」と勘違いしていることを示唆するものである。参考までに述べればそのように動作する回路のことを自励型回路という。旧来の冷陰極管用インバータ回路は確かに自励型回路が主流であり、一次側に設けられた並列共振回路の共振周波数がすなわちインバータの動作周波数を決定する。 |
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(3) |
結局、被告はこの従来技術と本件の技術とを混同しているのである。そしてさらに、被告は準備書面(3)8頁10行ないし24行でも同様の誤解をもって述べている。 |
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被告はこの記述で、原告は被告製品が直列共振周波数で動作しているものでないことを認めた、と述べているが、そもそも、イ号物件の特定の第6項において述べているのは被告製品において直列共振回路が存在していることだけなのである。
共振回路が存在し、かつ、それが共振しているかどうかをここで述べているわけではない。そもそも直列共振回路が存在していることと、直列共振回路が存在し、かつ、共振していることとは意味が全く違うのである。
したがって、このように、共振回路が存在していることのみしか述べていない部分において、被告は全く的外れなインバータの動作周波数について質問してきたということは、これはとりもなおさず、被告が被告製品を従来型のインバータ回路の動作原理同様、共振回路の共振周波数がインバータの動作周波数を決定する自励形回路の原理と明らかに誤認混同していることを示すものである。 |
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(4) |
ちなみに、被告製品の場合、インバータの動作周波数を決めているのはイ号物件の特定第3項
「U1内蔵のゼロ電流検出回路により出力を反転させるための共振電流を作るためのものである。」と記述されている部分であり、ゼロ電流検出機構によりインバータの動作周波数が決定される。被告はインバータの動作周波数を質問したいのであれば、この部分の特定において質問して来るのが適当であり、全く的外れな第6項においてインバータの動作周波数を質問してきているのである。 |
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したがって、そのような被告の質問に対しては、原告準備書面6にて答えたように、共振回路が存在しているとだけしか応答のしようがない。 |
3 |
MPS社製ICによるインバータ動作周波数の決定機構 |
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(1) |
上述のように被告は単に共振回路が存在することと、共振回路が存在し、かつ、それが共振していることとの区別がついていないので、参考までにMPS社製ICによるインバータ動作周波数の決定機構について概説する。 |
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(2) |
MP-1010の動作原理 |
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MPS社製IC、MP-1010は内部に4個のパワートランジスタを有するが、このパワートランジスタはH-Bridgeという回路を構成している。
H-Bridgeはスイッチ素子として動作しており、そのスイッチングのタイミングはZCS(ゼロ・クロス・スイッチ、或いは、ゼロ・カレント・スイッチ)という機構でスイッチングの切替タイミングを発生させている。
図2-1 トランス一次巻線の電圧と電流 |
このH-Bridgeの動作タイミングとトランス一次側に流れる電流との関係はMPS社資料5頁より引用すると次のようになる(図2−1)。
MP-1010のZCS方式ではこの切替タイミングを決定するためにパワートランジスタに流れる電流がゼロになることを検出して切替を行なうため、パワートランジスタの発熱が少なくなるというものである。このZCS方式の特徴として、トランジスタに流れる電流の位相はOutL-OutRの電圧の基本波の位相よりも少し遅延する。
この電圧位相に対する電流位相遅れがそのままトランス一次巻線に与えられる電圧位相に対する電流の位相遅れになる。
したがって、MP-1010の動作点は図2−2のように、電圧に対する電流位相が0deg.よりもすこしマイナス側になった周波数において動作するのである。
これをアドミタンスグラフ(図2−2上)との関係で見れば、ICの動作周波数は直列共振周波数とほぼ同じかそれよりも僅かに低い周波数で動作していることを意味する。 |
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図2-2 |
図2-3
図2-2の解析モデル |
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もとより、直列共振回路が存在することと、その直列共振回路が共振していることとは異なるものである。
直列共振周波数は直列共振回路によって決定され、それとは別の機構でインバータの動作周波数が決定され、その両者の周波数が近い関係にあれば共振回路は共振する。
なお、この「共振」という現象は直列共振点頂上においてのみ起きる現象ではない。
被告はインバータ回路の動作周波数、つまりは発振周波数と共振回路の共振周波数とがわずかでも異なるとそれは共振をしていないものだと主張しているようであるが、発振周波数と共振周波数とが少しぐらい異なっても共振回路は共振する。共振の現象には目安として半値幅という概念がありこれについては後述する。
MP-1010は上記のとおり直列共振周波数に近い周波数を自動的に検出して動作周波数を決定するものであるから、インバータの動作周波数と直列共振周波数とは必然的に近い周波数になり、直列共振回路は共振するのである。
ここで、従来方式のインバータを見ると、甲第25号証写真4-1及び4-2のインバータのトランス一次巻線側から見た電圧−電流位相の関係はほぼ-90deg.に近い。従来方式のインバータにおいても、実際のインバータの動作時にはもう少し負荷電流が流れ、見かけ上の力率は多少改善されるが、誘導性(励磁電流)と抵抗性(負荷電流)の電流のベクトル(90度ずれている)を合成したのでは本質的に力率を0deg.に近づけるものではなく、力率が悪く発熱の多い動作を強いられるわけである。従来のインバータ回路においてはトランス一次巻線に流れる励磁電流が減るわけではないので、励磁電流による一次巻線の発熱は本質的に減らない。
一方、MP-1010の資料においても明らかなことは、一次巻線に与えられる電圧と電流との位相差は非常に少ない。これは、被告製品にMP-1010が使用されている限り、力率の非常に良い動作点で動作していることをこの技術資料は示しており、それはすなわち本件特許の特徴である、力率の改善効果を如実に表現しているのである。
補足すれば、本件特許の特徴であるこのような力率の改善効果はトランス一次巻線の電圧に対する電流のベクトルが、二次側の漏れインダクタンスに流れる電流のベクトルと二次側に接続された容量に流れる電流のベクトル(両者は180度ずれている)とが合成されることにより本質的に位相差が0deg.に近づくところから生じる効果であり、これが本件特許の直列共振の効果により発生する力率の改善効果の本質部分である。
これは、トランス一次巻線に流れる励磁電流が直列共振の効果により少なくなることであり、その結果励磁電流による一次巻線の発熱が減るのである。
なお、この「本当の力率改善」によって一次巻線の発熱が減ることはトランスの小型化に寄与しているのであり、そのことは参考までに後述する。
また、直列共振周波数(直列共振点)近くを拡大してみると、ICの動作周波数はトランス一次側に与えられる電力が大きくなり、二次側に接続された蛍光管インピーダンスが低くなるにしたがって、しだいに低くなる傾向もはっきりと観測できる(図2−4)。
図2-4 IC動作点付近の拡大 |
この、蛍光管に与えられる電力が大きくなる(つまりは管電流が増える)とともにインバータの動作周波数が低くなっていくという性質は甲第17号証図5の実測結果とも符合するものである。
このように、被告製品に使用されているMP-1010はその動作原理として力率の良い周波数を自動的に選択して動作するものである。
また、結果としてその力率の良い周波数は直列共振周波数よりも少し低い周波数に発生するわけであるから、それはとりもなおさず、被告製品が直列共振周波数よりも少し低い周波数で本件特許の重要な効果である力率の改善効果を有効に利用していることを示す。
したがって、被告製品においては、直列共振周波数とインバータの動作周波数は近い関係になり、直列共振回路は共振するのである。
なお、MP-1010の動作原理上その動作周波数は直列共振周波数よりもわずかに低い周波数となることは乙7号証のMPS社技術資料の中にも明記されている。(P8Figure5)
ちなみに、被告は被告準備書面(3)6頁の1行ないし11行で直列共振周波数を約46KHzであると述べ、また、インバータの動作周波数を約62kHz〜約65kHzであると述べているが、MP-1010のICの動作原理上、ZCSを有効に働かせてICの発熱を低く抑えるためには直列共振周波数よりもインバータの動作周波数の方が相当に高いなどということは有り得ない。
MP-1010の動作原理からして被告製品のインバータの動作周波数が約62kHz〜約65kHzであるならば、被告製品において直列共振周波数は65kHzかそれよりも僅かに高い周波数にあるということが逆にICの動作原理上から説明することができるわけである。
これを甲第17号証4頁図4で再確認すれば、アドミタンスグラフによって示される直列共振点とインバータの動作周波数は非常に近い関係にあることが実証されている。
またさらに、図4の3mAと5mAのグラフを比較すると、管電流が多くなり蛍光管のインピーダンスが低下した場合には直列共振周波数に比べてインバータの動作周波数が低くなっていくと同時に力率もより良い方向に向かおうとしている傾向もはっきり出ている。
これはシミュレーション結果、本準備書面図2−2とも非常に良く一致し、シミュレーションモデルと実測結果との一致はシミュレーションモデルがそれだけ正しいということを示すものである。
なお、被告は原告がシミュレーションに用いたモデル(三端子等価回路)をただ単に便宜上のもの、と述べているが、シミュレーションというものはそのような軽々しいものではない。モデルさえ正しければ第三者による鑑定と同等の証拠能力があると見なしても良いほど普遍性、再現性の良いものである。原告は、各電子部品のパラメータ(トランスの漏れインダクタンス、液晶バックライトの寄生容量)から求められるシミュレーション結果と、それを実測の側から証明する二つの手法を示しており、その、それぞれ違う手法で求めた結果が非常に良く一致することを示しているのであるから、シミュレーションモデルは正しい。被告が、このシミュレーションモデルに異を唱えるのであれば、具体的に指摘されたい。
被告は、原告が実測した製品(動作周波数54kHz〜58kHz)に比べ動作周波数が若干高い(62kHz〜約65kHz)と述べているが、その場合はアドミタンス・位相グラフ及び直列共振周波数ともども周波数の高い方向へ約7kHz移動するに過ぎないはずである。
被告は既に原告が示しているアドミタンス−位相特性実測装置(甲第17号証図3)と同じものを所有していることが確認されている(乙第6号証4頁の図5(a)の装置)ので、原告と同じ方法により実測を行なって結果を示した上で、その結果に立脚して具体的な反論を行われたい。 |
4 |
被告の直列共振周波数の理解の誤り |
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ところで、直列共振周波数よりもインバータの動作周波数の方が相当に高い旨の被告の主張は、被告準備書面(3)5頁の図において、直列共振周波数というものを単に間違えて捕らえているに過ぎない。
直列共振周波数はどのような基本的文献を参照しても容量成分のリアクタンスと誘導成分のリアクタンスとの和がゼロになる周波数であると書かれている。
例えば共振周波数を計算する式はであって、これはあまりにも基本的すぎる公式である。
この公式の中には抵抗成分Rが介在していない。したがって、R成分の大小によって共振周波数が変わるなどという概念は有り得ない。昇圧効果の最大点は共振周波数ではないのである。
被告が示した乙第2号証にたまたま述べてある「直列共振とは電圧と電流を最大にする周波数である」とは、その前後をよく読めば、抵抗RとコンデンサCとインダクタンスLとが直列に接続された場合に限定される記述であることは明らかであり、著者がたまたまそのような限定について書き込まなかったに過ぎない。
本件の例では抵抗成分Rは容量成分Cと並列に接続されており(乙第7号証7頁
Figure 4a,4b)このような形態の直列共振回路については乙第2号証には何の説明もない。
そこで、本件のような容量に並列に抵抗が接続される場合の直列共振回路の場合、電圧と電流がどのような関係になるものか再びシミュレーションで確認した。(図2−5、2−6) |
図2-5 |
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上の図が電圧であり、下の図が電流である。被告の主張のように「直列共振とは電圧と電流を最大にする周波数である」というのであれば、電圧の最大となる周波数と電流が最大となる周波数とが常に一致していなければならないが、図2−5では明らかにずれていることが確認できる。
図2-6 図2-5の解析モデル |
そもそも、電圧の最大値となる周波数をもってそれを直列共振周波数であるとする被告の主張が誤りなのである。
いずれにしても、直列共振周波数を決める式はであって、本件のような少し変形した直列共振回路の場合の昇圧効果頂上は一般に直列共振点(直列共振周波数)とは言わない |
第5 |
分布定数性について |
1 |
被告の主張の誤り |
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被告は本件特許技術の分布定数性に関し、原告の主張及び証拠に対して全く理論的背景や等価回路としての数値的検討もなく、自説を展開していると主張し、全面的に否認している。
しかし、原告の主張や証拠は、無線工学に関する知識のある者にとっては自明のことである。
以下、詳説する。 |
2 |
原告の証拠が定量的であること |
|
被告は、原告が提出する証拠を定量的であると認識していないようであるが、きわめて定量的である。 |
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(1) |
まず、被告はLとCとにより構成される遅延回路のことについて、基本的知見に大きな欠如があることを露呈している。 |
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被告準備書面(3)P10の25行目ないしP11の3行目に、「電力が回路の導体中を光速で伝播するとした場合、その波長は5000mとなる。実際には導体周辺の場の誘電率や透磁率が、真空のそれらよりも大きいため、電力の伝達速度は遅くなり、波長としては短くなるが、その割合はそれほど大きくはない。」、と述べるが、この認識にそもそも重大な間違いがある。
原告は被告がそのような間違いを犯さないように予め甲第13号証を提出している。この書籍の102頁には図9−1として、「デジタル・パルス回路には数nS〜数100nSくらいまで」のものが使用されるという記述があるが、これを見てもわかるとおり、フェライトコアの周りに巻かれた巻線には桁違いのインダクタンスが発生し、単純な銅線の場合の信号伝達速度に比べて極度の遅延が起こるのである。 |
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(2) |
これを具体的に、被告製品相当品における実測結果から計算すると次のようになる。 |
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甲23号証より写真7-1 |
甲第23号証の写真7-1を再度参照する。この場合の測定条件は60kHzである。磁束測定コイルaないしcはトランス二次巻き線上に取り付けられたものである。
つまりこの実験では二次巻線上に発生する信号の遅延現象を捉えているものである。
ここで、測定コイルaからcまでの距離は1.0cmであり、それぞれのコイルに検出される信号の波形は2.34μ秒遅延している。
これらのことから二次巻線上を通過する信号の速度を計算すると、
という計算結果が得られる。
この値は光の伝播速度と比べて桁違いに遅いことは明らかである。
また、波長も、
となる。
さらにこれを、被告の認識に合わせて銅線の長さから計算してみても、測定コイルaからcまでの間に存在する巻線の長さは、1ターンあたりの銅線の長さを14mm、巻数を2000Tとして計算すると、14×2000=28000mm=28mとなる。そして、それぞれのコイルに検出される信号の波形は2.34μ秒遅延している。これらのことから二次巻線上を通過する信号の速度を計算すると、
同時に波長は、
となる。
結局、こちらの視点から見ても、この値は光の伝播速度と比べて桁違いに遅いことは明らかである。
いずれにしても、波長5000mという被告の認識は桁違いの誤りを含んでいることは明らかである。 |
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(3) |
また被告準備書面(3)11頁、23行目も誤りである。 |
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23行目に「巻線の長さに対して巻線に印加されるサージの波頭峻度が十分大きいときに適用可能な等価回路であり」とあるが、先ず、前記したことと同じように、ただの銅線の場合と伝播速度が大して変わらないという先入観に基づいて主張をしている。
また、等価回路が「波頭峻度が十分大きいときに適用可能」と述べているが、それでは被告は当該書籍の記述は非線形の解析をしているとでも主張したいのであろうか。少なくとも書籍の当該部分の記述ではどこにも絶縁が破壊された上での解析(つまりは非線形を前提に述べることと)であるとは書いていないし、そもそもこの書籍自体、落雷によるサージがあった場合にトランスを絶縁破壊から守るためにどのように分布定数性を利用するか、ということを中心に記述してあるのである。このように、この書籍にある定在波理論および進行波理論の項は線形解析を前提に述べているのであるから被告の主張は失当である。
きわめて基礎的なことを述べるが、線形解析とは電圧が高い低いにかかわらず、それを構成する受動部品(つまりはインダクタンス、コンデンサ、抵抗)のパラメータが変化しない場合の解析のことである。電圧が高い低いにかかわらず、進行波の速度にも定在波の発生条件にも変化はない。 |
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(4) |
また、被告は被告製品及び相当製品の二次巻線に普遍的に分布定数性が生じていることを否定するために、原告の示した実験結果を全く無視しようとしている。 |
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|
再び甲第23号証より写真7-2を参照する。
写真7-2は相当製品の二次巻線上に発生する進行波や定在波を観測したものである。このように二次巻線上に設けた磁束測定コイルaないしcの間に電圧や位相の違いが生じること自体、分布定数性の証拠なのである。
これらの磁束漏れが二次巻線の分布定数性遅延回路によるものであることは、甲第33号証33頁の第2-26図との符合を見てみれば明らかである。
ここで、Zoとは伝送路の特性インピーダンスであり、Zrとは負荷のインピーダンスである。ZoとZrが等しければ伝送路にはうねりは発生しない。(@)ところが、ZoとZrとが一致しないと伝送路にはうねりが発生するのである。(AおよびB)
これらの現象はアマチュア無線や無線技術従事者の間ではSWR(定在波比)として一般に知られているものである。
本件のトランスの二次巻線上にもこれと同じ現象が発生している。 |
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図3-1
甲第33号証第2-26図 |
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甲第23号証より
写真7-2 |
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図3−1と図7-2の対比を詳細に示したものが図3−2である。 |
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図3-2 |
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これを見れば、二次巻線上に分布定数性伝送路と全く同じような定在波や進行波が発生していることは明らかである。 |
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(5) |
また、被告は原告が示す証拠を定量的ではないと否認するが、甲第17号証の実測結果図10(図4と間違いがあるので訂正する)は明らかな定量的磁束漏れを示しているので再び引用する。 |
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甲第17号証より図10電圧差実測結果 |
磁束検出コイル2,3,4(写真7-1ではa,b,cに該当)の電圧に明らかに定量的な違いが生じている(L2=160mV、L3=300mV、L4=340〜360mV)。
具体的な電圧の差はすなわち時間的に変化する磁束本数の差であり二次巻線上から漏れる磁束の本数を意味し、L2とL3及びL3とL4の間から漏れている磁束の量に比例するわけである。またさらに、原告は甲第23号証3頁ないし4頁において、発生したうねりの大きさから反射波比率(SWR)まで算出している。反射波比率は約35%である。
また、密結合部(おおよそL2のあたり)に貫入している主磁束の量は反射波の影響により少しわかりにくくなっているが、それでも少なくとも150mV相当よりは多い。(定在波の影響がなければおそらく250mV相当程度であろう)
これに比べて疎結合部であるL2とL3との間で漏れる磁束量は140mV相当、および、L3とL4との間で漏れる磁束量はおよそ50mV相当である。
被告はこのような具体的な数値が定量的でないとするならば何をもって定量的数値というのであろうか。既に原告において、上述するような測定方法及び数値を示したのであるから、被告においても具体的な実証と測定値をもって反論されたい。 |
第6 |
結合係数について |
1 |
被告の結合係数の理論の誤り |
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被告は、結合係数をもって、被告製品の外部ロ字状コアが付加物ではないとか、被告製品は本件特許における「漏洩磁束型」ではない旨主張する。
既に、原告準備書面4、「第5 結合係数について」(43頁以下)において、結合係数が漏洩磁束とは何ら関係のない旨反論したが、被告が結合係数について主張しているため、再度、これに対し反論する。 |
2 |
結合係数は磁束漏れの指標ではないこと。 |
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(1) |
結合係数は磁束漏れの指標ではない。自己インダクタンスとJIS漏れインダクタンスの比から求められる係数である。 |
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|
トランスにおけるよくある誤解として、結合係数が低いと磁束が漏れやすいという迷信がある。 |
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(2) |
まず、同じ自己インダクタンス値を有するトランス同士で比較した場合、結合係数が1に近いほど磁束漏れは少ないということは、正しい。なぜならば、結合係数が1に近いほど、JIS漏れインダクタンス(一次側を短絡して計測した場合に二次側で観測される残留インダクタンス、つまりは短絡残留インダクタンス)の値が小さくなるからである。 |
|
|
一般にいう「結合係数が高いから磁束漏れは少ない」といわれる通念はここから生まれている。 |
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(3) |
ところが一方で、同じJIS漏れインダクタンス値を有するトランス同士で比較した場合、結合係数が1に近いほど磁束漏れが少ないかといえば、これがそうはならない。なぜならば被告が準備書面(3)16頁の25行目ないし17頁の3行目に認めるように漏れ磁束量と負荷電流の大きさとを関連付けるのが漏れインダクタンスだからである。すなわち、漏れインダクタンスが決まって負荷電流が決まれば磁束漏れの絶対量は決まってしまう。漏れインダクタンス値こそが磁束漏れの指標なのである。 |
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|
ここで明らかなことは自己インダクタンス値は磁束漏れとは関係ない。したがって結合係数も磁束漏れとは無関係なのである。
また、被告は、準備書面(3)16頁の25行目ないし17頁の3行目の記述をもって原告の主張である、「本件特許明細書との関係においてはLs(JIS漏れインダクタンス)のみが重要であって、Lo(自己インダクタンス)は関係ない。(中略)したがって結合係数は本件特許には関係ない数値である。」ということを認めてしまっていることになる。被告と原告との間に結合係数に関する解釈の争いは残るが、漏れインダクタンス値とそこを流れる電流が漏れ磁束の絶対量を決めるものだという点では認識が一致している。 |
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(4) |
トランスが漏洩磁束性として使われているか否かはそのトランスの持つ漏れインダクタンス値が負荷のインピーダンスとの関係で影響し合うような値かどうかで決まる。 |
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|
一般論で言えば、あるトランスが漏洩磁束型トランスであるかどうかはトランス単体で決めることはできない。
負荷との関係で漏洩磁束性が無視できるような使い方をした場合、そのトランスは非漏洩磁束型トランス(閉磁路型トランス)となり、負荷との関係で無視できないような使い方をした場合、漏洩磁束型トランスとなる。
一方、本件においては、具体的には被告製品のLsが乙第6号証によれば256.7mH(被告表記Lts)である。なお、Ls(被告標記Lts)とはJIS漏れインダクタンスである。これは測定値が65KHzであるが、分布容量の影響は受けていないので値は信用できる。一方、自己インダクタンスLo(被告表記Ls)値は分布容量の影響を受けているため信用できない。
なお、厳格に定義すると漏れインダクタンスの値にはJISによるものと電気学会によるものとがあり、これらの数値の間には約2倍の差がある。原告準備書面(5)で示したように、電気学会漏れインダクタンスでは漏れインダクタンスを一次側と二次側に折半してそれぞれを漏れインダクタンスLeとしているのに対し、JIS漏れインダクタンスLsではLeを一次側或いは二次側に集中して(換算して)合成しているためである。
この値から周波数65kHzにおけるJIS漏れインダクタンスのリアクタンスを計算すると、の計算式より104.8kΩと求められる。
ここで、被告がAMBIT社から確認した冷陰極管の抵抗値が100kΩ程度であると主張していたため(被告準備書面(3)4頁の10行目)、その値と見比べてみると、漏れインダクタンスと負荷抵抗はほぼ同じ値をとり、影響し合う値であると確認される。原告は相当品の液晶パネルの寄生容量を8pFと測定した。イ号証の特定により並列コンデンサは15pFである。被告製品相当品のトランスの一次巻線分布容量は2.7pFである。これらの合計容量は約25pFとなるので、65kHzにおけるリアクタンスを計算すると、の計算式より97.9kΩと求まる。この値はインバータ動作周波数65kHzにおいての共振状態を示し、JIS漏れインダクタンス256.7mHと影響し合う値であると言える。
よって、被告の主張である被告製品に使われているトランスは非漏洩磁束型であるということ、及び共振回路は存在しないということは否認する。被告製品は、漏洩磁束型であり、かつ、共振回路が存在して共振するものである。 |
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(5) |
被告準備書面(3)17頁の3行ないし5行の記述によれば、一般論として、トランスが漏洩磁束型として使われるのか、非漏洩磁束型(つまりは閉磁路型)として使われるのか、製品出荷前にトランス単体で決まっているものではないという原告の主張には異論があるものと推測される。 |
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|
そして、被告は漏洩磁束型か否かをこの判断のために結合係数を目安にするべきだと主張している。
しかし、少なくとも、被告製品に限れば漏れインダクタンスのリアクタンスと負荷のインピーダンスとの関係は最初から明確である。なぜならば、被告製品はDeLL社製液晶ノートパソコンのインバータ用に使われるトランスとして、カスタム品として調整され出荷されているものだからである。すなわち、対象とする負荷に対する専用品である。
前記の計算結果からも、インバータ動作周波数における漏れインダクタンスのリアクタンスが約100KΩであり、14インチ液晶パネルの負荷約100KΩに合わせて作り込まれていることが明らかとなっている。
よって、被告製品は漏洩磁束型トランスとして出荷しているのである。 |
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(6) |
また、トランスが負荷との関係で使い方によって漏洩磁束型トランスとして振舞うか非漏洩磁束型トランス(閉磁路トランス)として振舞うかについて、甲第16号証の実証実験結果(1)のA及び(2)のAの写真は、重大な結果を捉えている。 |
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|
トランスは甲第16号証の実証実験結果(1)のA及び(2)のAの写真で示されているように、漏れインダクタンスに比べて負荷のインピーダンスや容量のリアクタンスが近いか否か(つまりは共振周波数で動作させているか否か)により挙動が変わる。
漏れインダクタンスのリアクタンスと容量のリアクタンス及び負荷のインピーダンスとの関係が近いとトランスの漏れ磁束が極端に多くなり、さらに本件特許の特徴である二次巻線上の磁束漏れが観測される。すなわち、トランスは本件特許の漏洩磁束型トランスとして動作するのである。
一方、漏れインダクタンスのリアクタンスに比べて負荷のインピーダンスや容量のリアクタンスとの関係が遠い(つまりは共振させていない)とトランスは非漏洩磁束型(閉磁路型)トランスとして挙動する。
すなわち、漏洩磁束型トランスであるか否かは漏れインダクタンスとそれに接続する負荷との関係で決まるということが自然科学現象の発現として実証されているのである。 |
3 |
極端な漏洩磁束の意味 |
|
(1) |
被告は、本件特許明細書にいう「極端な漏洩磁束」に関して、従来の大きな漏洩磁束性に比してさらに大きな漏洩磁束性のことであるとして結合係数との関係で主張を述べるが、この解釈は誤りである。
まず、「極端な漏洩磁束」という文言であるが、本特許明細書には【0010】「昇圧トランスの形状を棒状の漏洩磁束トランスにすることにより極端な漏洩磁束効果を持たせると、一次巻線近傍の二次巻線は漏洩磁束トランスとしての効果を有し、同時に一次巻線から遠端の二次巻線はチョークコイルとしての効果を有する」と記載されているものであり、平成11年判定請求第60074号8頁の2行ないし3行に述べられているように「「遊離インダクタ効果」(具体的には「極端な漏洩磁束効果」)」という意味である(乙第2号証)。すなわち、本件特許明細書の請求項で言うところの、二次巻線の一次巻線から離れた部分が疎結合部となる、というのが遊離インダクタ効果であり、「極端な漏洩磁束効果」である。
したがって、この「極端な漏洩磁束効果」こそが従来の漏洩磁束型トランスと本件の漏洩磁束型トランスの磁束漏れとの違いを指していることになる。 |
|
(2) |
仮に被告が主張するように、「極端な漏洩磁束性」を従来の漏洩磁束性よりも単純に漏洩磁束性が大きいもの、つまりは被告が主張するように結合係数が低いものであると解釈しようとすると、準備書面(3)18頁の21行ないし24行で引用して述べるように、従来型であっても結合係数が0.01のトランスが既に実用化されている というものがあり、本件特許は成立しない。 |
|
|
よって、結合係数の大小が本件にいう「極端な漏洩磁束性」を決めるものではないことは一目瞭然である。 |
4 |
JIS漏れインダクタンスについて |
|
(1) |
既述のとおり、本件特許技術にとって重要なのはJIS漏れインダクタンスLsの値であって自己インダクタンスLoの値ではない。Lsは本特許明細書に記載する直列共振を構成する重要なパラメータである一方、Loの値は並列共振を構成するパラメータなのであるから本特許においては技術的にあまり意味を持たない。 |
|
|
更に、本件特許明細書にはLoのことも並列共振のことも一切記載していないのである。明細書にLo及び並列共振のことが記載されていないことについては二つの意味を持つ。先ず、技術的に関係がないから記載しなかったのである。LoとLsから計算される結合係数は本件特許明細書上からも本件特許とは関係がないのである。したがって、これらのいずれの理由から見ても結合係数と本件特許技術とは何の関係もないことは明白である。 |
|
(2) |
上記で述べてきたように、本件特許明細書に述べる漏洩磁束とは直列共振に関係するものである。 |
|
|
ここで述べる「極端な漏洩磁束」とは、具体的にはその値の大小とはそれを構成するJIS漏れインダクタンスの大小のことを意味する。
JIS漏れインダクタンスが何に対して関係するかといえば、前述したように負荷となる蛍光管インピーダンスと比較して関係するという意味である。 |
|
(3) |
そこで、JIS漏れインダクタンスの大小と蛍光管インピーダンスとに関する歴史的推移について説明する。 |
|
|
最も歴史の古い従来型インバータ回路とは甲第25号証写真4-1ないし4-2で示したインバータ回路のことである。
このインバータ回路において使われているトランスのJIS漏れインダクタンスLsを測定すると110mHとなる。また、インバータの動作周波数は21kHz、負荷となる蛍光管のインピーダンスは実用管電流の5mAにおいて55.2kΩである。このLs値とインバータ動作周波数からその周波数におけるLsのリアクタンス値を求めると、14kΩという値が得られる。
この値と負荷の冷陰極管のインピーダンスを比較すると約4倍(3.8倍)も開きがある。したがって、このインバータ回路は漏れインダクタンスの存在を無視して使っている。
また、直列共振周波数とインバータ回路の動作周波数との関係においても甲第25号証図4-1から13.4倍もの開きがあることがわかり、このインバータ回路は直列共振周波数の存在も無視して使っている。すなわち、インバータ回路においてはLsの存在は一切無視されているのであるから、このトランスは非漏洩磁束型トランス(閉磁路型トランス)として使われているのである。
次に、本特許技術と従来型インバータ回路との中間的な技術として、1995年以降、顕著に使われ始めた技術があり、これがいわゆる3倍共振型技術と呼ばれるものである。(甲第5号証23頁ないし24頁)
図4-1 3倍共振 |
この技術に基づくインバータ回路のアドミタンス・位相特性を測定したものが図4−1である。直列共振周波数とインバータ回路の動作周波数との関係はちょうど3倍である。このインバータ回路の場合、使われているトランスのLs値は55.7mHであり、インバータの動作周波数55kHzにおけるLsのリアクタンス値は19.2kΩである。このインバータ回路においてはトランスの漏れインダクタンスを積極的に3倍高調波の共振に利用しており、トランスの使い方としては漏洩磁束型トランスとして利用していることになる。そして時代がさらに進んだものが本件のインバータ回路である。
なお、本件の発明は1993年に行われているが、相当に普及し始めたのは1999年以降である。これは、専用ICの普及と関係があり、それは甲第4号証及び甲第5号証冒頭で述べている。
JIS漏れインダクタンスの値は257mH(被告製品)となり、インバータ動作周波数におけるリアクタンスは冷陰極管のインピーダンスとほぼ等しくなった。
インバータの動作周波数と直列共振周波数との関係も1倍ないしは2倍以下である。すなわち、トランスの漏れインダクタンスを積極的に利用し、基本波においても共振を利用しているのである。
これらの関係を一覧表にすると次のようになる。
|
漏れインダク
タンスmH |
インバータ
周波数kHz |
リアクタンス
kΩ |
管抵抗kΩ
(5mA) |
比 |
従来型 |
110 |
21 |
14.5 |
55.2 |
3.803 |
3倍共振 |
55.7 |
55 |
19.2 |
75 |
3.896 |
本
件 |
相当品1 |
311 |
54 |
105.5 |
110 |
1.042 |
相当品2 |
286 |
61.5 |
110.5 |
120 |
1.086 |
被告製品 |
257 |
62 |
100.1 |
100 |
0.99 |
従来型及び3倍共振型に比べ、本件のインバータ回路に使われているトランスのLs値が特筆的に大きいのは一目瞭然であり、これが「極端な漏洩磁束」の示す意味の一つであると同時にこれは遊離インダクタ効果(本件特許発明にいう、極端な漏洩磁束効果)が発生しやすい条件でもある。 |
|
(4) |
以上述べたように、本件特許発明との関係において、「極端な漏洩磁束」とは負荷インピーダンスに対するLs(のリアクタンス)の大きさ、或いは遊離インダクタ効果そのものを表すという意味である。 |
|
|
Lsの大きさ、遊離インダクタ効果、いずれしても、極端な漏洩磁束性/極端な漏洩磁束効果の解釈はトランスの結合係数とは無関係なものとなるのは明らかである。 |
|
(5) |
補足までに述べるが、被告があくまでも本件特許技術を結合係数と関連付けて主張を続けるのであれば、次の二つのシミュレーショングラフを見て結合係数と直列共振周波数との関係について判断するべきである。 |
|
|
乙第6号証より被告製品に使われているトランスの結合係数を0.962とし、LoとLs(JIS
C 5321表記に統一)をそれぞれ3,456mH、256.7mHとする。
ここから電気学会漏れインダクタンスLeと相互インダクタンスMを求めると、それぞれ130.8mH、3325mHと求まる。
これによりシミュレーションを行ったものが図4−2である。
図4-2 結合係数0.962 |
次に、被告製品とほぼ同形状である、被告関連会社FDK社のトランスの資料(甲第39号証)をもとに結合係数を0.849(コア形状が同一かつ同用途向けならば大きくは異ならない)と見積もって、自己インダクタンスLoを917mHとし、この値から電気学会漏れインダクタンスLeと相互インダクタンスMを求めると、それぞれ138.9mH、778mHと求まる。
これによりシミュレーションを行ったものが図4−3である。
図4-3 結合係数0.849 |
ここで、両方の図の直列共振点付近(線で囲った部分)における特性を見比べて見ると、どちらもほとんど変わりがないことがわかる。
これらはLsの値を同じとして結合係数のみを変えてみたものである。
したがって、このようなシミュレーション結果によっても、本件特許技術と結合係数とは無関係であるということが明らかになるのである。 |
第7 |
その他の理論的・技術的な反論 |
1 |
共振現象の及ぶ範囲半値幅について |
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(1) |
被告は共振回路が存在することと共振回路が存在し、かつ、その共振回路が共振することとの違いが理解できていないのか、インバータの動作周波数が直列共振周波数つまりは共振点で動作していない限りそれは共振しているとは認めないと主張しているのかがいま一つ明確ではないので以下に共振現象における一般論を述べる。 |
|
(2) |
共振現象とは共振回路が存在し、その共振回路の共振周波数と、外部から与えられた信号の周波数とが近い関係にあれば共振現象が発生する。 |
|
|
本件のインバータ回路の場合、外部から与えられた信号とはすなわちインバータ回路の動作周波数(発振周波数)である。 |
|
(3) |
それでは、共振回路の共振周波数と外部から与えられた信号の周波数とがどれだけ近い関係にあれば共振現象が生じるかについては一つの目安として半値幅という概念がある。 |
|
|
甲第40号証に文献の引用を示す。
半値幅とは共振の効果の頂点に比べて電流あるいは電圧の自乗の値が半分になる周波数である。
そこで、甲第40号証233頁の8.37式にしたがって、半値幅を求めてみたものが図5−1である。
なお、8.37式は一部にという記載があるが、これはの誤植であるので書籍出版社に確認し、訂正することの確認を得た。
この式に基づいて |
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@ |
Lを被告関連会社のFDK社の同等トランスのJIS漏れインダクタンス280mH |
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A |
CをIBM社液晶パネルの寄生容量の実測から求めた寄生容量と巻線分布容量、補助容量の合計である25pF |
|
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B |
RをAMBIT社からの回答にある冷陰極管のインピーダンス約100KΩ |
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|
として計算したところ、共振周波数は約60kHzとなった(図5−1)。
そして、共振の影響が半分になる周波数は共振周波数60kHzに対して低い方に対する影響は本件の場合、約30kHzあたりまで及んでいるのである。このように、共振現象の影響範囲というものは共振周波数を中心としてその前後に広く及ぶ。
したがって、被告の主張が仮に、インバータの動作周波数が直列共振周波数つまりは共振点で動作していない限りそれは共振しているとは認めないというものであったとしても、共振周波数とインバータの動作周波数が相当に乖離していない限り、共振をしていないということはできない。 |
2 |
本当の力率改善効果と見かけの力率改善効果の違い |
|
(1) |
被告は本件特許技術における力率改善効果について、見かけの力率改善効果と本当の力率改善効果の区別がついているのかどうか不明な点があるのでそれについて補足的に述べる。 |
|
(2) |
本件特許の効果 |
|
|
トランスの小型化は動作周波数を上げることにより実現できることは自明の理であるが、同時に力率の改善効果が得られればそれもトランスの小型化に寄与する。
これらは自明なことであるが、力率の改善効果が得られれば発熱は減り、それは巻線とコアの容積を減らすことを意味し、トランスの小型化につながるものである。
ところが、これらが見かけの力率改善効果であれば発熱が減ることはなく、したがってトランスの小型化にはつながらない。見かけの力率改善効果と本当の力率改善効果との区別をつけるために、以下にその原理について説明する。 |
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(3) |
被告は準備書面(3)9頁の21行ないし25行の中で力率改善効果は従来型のインバータにも存在すると述べているが、これは、見かけ上の力率改善効果をもって力率改善効果があるのではないかという、よくある誤解に陥っている可能性があるので予め解説する。 |
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従来型のインバータ回路においてはトランス一次側から見た負荷は一次巻線の自己インダクタンスが負荷と並列に接続されたものと見なせる。すなわち、一次巻線に流れる電流は負荷の自己インダクタンスに流れる励磁電流と負荷に流れる抵抗成分の電流とが合成された電流となる。
これを図にすると図6−1のようになる。 |
図6-1 見かけの力率改善効果 |
図6-2 本当の力率改善効果 |
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電流のベクトル合成を見てもわかるとおり、励磁電流と負荷電流との合成では必ず多くの励磁電流が流れ、これにさらに抵抗負荷に流れる電流が加わる。
よく誤解するのは、見かけ上一次巻線電流に流れる電流位相は−90度よりも0度に近づいているので一見力率が改善されているかに見える。ところが、これでは一次巻線に流れる電流は多くなるだけで力率の改善にはつながっているものではない。
一方、本件の特許技術における力率改善とは次のとおりである。(図6−2)
二次側に接続された容量成分により誘導成分が打ち消され(本件特許明細書【0021】)本当に励磁電流が減っている。その結果、一次巻線に流れる電流成分はほとんど抵抗負荷電流のみとなり、一次巻線に流れる電流が減りそのために銅損が大幅に減るのである。
CとLとの合成電流が完全に打ち消しあった場合が直列共振周波数であり、周波数が多少異なり、わずかに打ち消されない成分が残っている場合でも従来型に比べてよりも劇的な改善効果が生じるのである。 |
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図6-3 より詳細なモデル |
トランスの誘導成分の部分を参考までにより詳細に述べると、トランスは相互インダクタンスを含んだ三端子等価回路になっている。その結果、直列共振周波数においては相互インダクタンスの並列成分が合成されて若干誘導性になる。
この様子はシミュレーション結果にもよく現れている。 |
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(5) |
この、励磁電流が減る効果こそが本件特許の力率改善効果であるが、このような本当の力率改善効果なら結果としてトランスの小型化に効果がある。 |
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従来のトランスにおいては発熱を減らそうとすれば、それは一次巻線の巻数を増やすか、あるいはコア断面積を大きくして一次巻線の自己インダクタンスを増やすかしか方法がない。これはいずれもトランスの大型化につながる。
一方、産業界の要望によりトランスを小型化していくと、どうしてもコア断面積も小さくなり一次巻線も減らさなければならない。このことは一次巻線の自己インダクタンスが小さくなり、その結果励磁電流の増加につながり銅損が増えることを意味する。
したがって、従来型インバータのトランスにおいてはトランスの小型化には一定の限界があったのである。 |
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ところが本件特許技術によれば本質的な力率改善効果がある。 |
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すなわち、励磁電流を大幅に減らせるのである。
そのために、本件の特許技術においては従来のように一次巻線のインダクタンスを大きくする必要がなくなり、したがって、一次巻線の巻き数もコア断面積もともに劇的に少なくすることが可能となったのである。
また余談であるが、コアロスはトランスに使われているコアの体積に比例する。
本件特許技術によりトランスの小型化が可能になると、使用されるコアの絶対量も大幅に減ることになったので、その結果副産物としてコアロスまでも減少したのである。 |
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したがって、本当の力率改善効果が得られたからインバータ回路のトランスが小さくできたのであり、見かけの力率改善効果であるならばトランスの小型化にはつながらないのである。 |
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まして、ただ単に外部コアを取り除いたからトランスが小型化できたというものでもない。 |
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(8) |
このようなことから、従来型インバータ回路においても力率の改善効果があるという被告の主張は上記のような見かけ上の力率改善効果(図6−1)を誤認しているものか、或いは最近出回る従来型回路の変形であるコレクタ共振型インバータ回路において、二次側の直列共振周波数がインバータの動作周波数の2倍内外であるインバータ回路の場合で、直列共振による力率改善効果(図6−2)が多少働いている(つまりは本特許侵害が疑われる)ようなインバータ回路について述べている可能性が高いと思われる。 |
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いずれにしても、それらが本当の力率改善効果なのか見かけ上の力率改善効果なのかは上記の視点で区別が付くであろう。
本件特許技術と従来型技術との中間に、いわゆる3倍共振型と言われるコレクタ共振型回路が存在するので参考までに参照されたい(甲第5号証図5ないし6)。ここに使われている直列コンデンサは一見従来のバラストコンデンサと区別がつきにくいので注意する必要があるが、これは共振回路の一部を構成しているものである。 |
3 |
コンデンサは電力を消費するものではない。 |
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(1) |
被告は被告準備書面(3)6頁の18行ないし25行において、「寄生容量があることにより余分な電力を消費している」と述べ、放電管周辺に発生する寄生容量に流れる電流がインバータ回路の効率を低下させていると主張しているが、そもそも容量に流れる電流というものは物理の常識として損失を起こすものではないことは明白である。 |
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したがって、放電管を寄生容量の原因となる液晶パネルに組み込んだ場合と、放電管を液晶パネルから取り外して寄生容量が少なくなった状態とで比較した場合に、液晶パネルから取り外した方が消費電力が少なくなるというのは効率が向上しているわけではない。
放電管を液晶パネルから取り外すと寄生容量が小さくなり、その結果インバータの動作周波数が高くなる。このためにトランスのJIS漏れインダクタンスによるリアクタンスが大きくなって放電管に十分な電力が供給できなくなるために入力電流も減るのである。 |
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(2) |
まず、インバータの動作条件が大幅に変化しているのであるから、これらを確かめるために被告はインバータの動作周波数の情報を提供しなければならない。また、放電管の消費電力は低下しているので全光束が減っているのである。 |
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厳格に述べれば被告は全光束計を用いてそれぞれの場合の全光束を測定して、それとインバータの入力電力とを比較した上で効率がどのように変化したのか示さなければ意味がない。
全光束の測定は困難であれば次善の策として、それぞれの場合の放電管にかかる電圧、電流を測定し、入力電力に対する出力電力の比で効率の変化を議論するべきである。結果としていずれも効率に大きな変化はないはずである。
なお、放電管を液晶パネルから取り外した場合に直列共振周波数が上昇することは甲第16号証において実証済みである。(液晶パネルに組み込んだ場合65kHz、液晶パネルから取り外した場合85kHz)。
いずれにしても、放電管を液晶パネルから外した場合には寄生容量の値が小さくなるだけのことであり、被告製品が寄生容量を利用していないことの証明にはならない。むしろ、動作周波数の変化は寄生容量を利用していることの証明となる。 |
4 |
インダクタは電力を消費するものではない。 |
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(1) |
また被告は被告準備書面(3)14頁の19行ないし22行において、「効率が良いということは結合係数(k)が可級的に1に近いことを意味する」と述べ、結合係数が低いトランスは効率が低いものと認識しているようであるが、これはきわめて基礎的な概念において誤りである。 |
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実際、トランスについてそれほど詳しくない者は結合係数が低いと変換効率が低いと勘違いしている場合が少なくないが、そのようなことを危惧してあらかじめ原告は明細書に「磁束の漏洩を効率上有害なものと捕らえる基本設計から閉塞磁束型、つまり、EIあるいはEE型が採用されることが多かった。」と述べているのである。 |
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(2) |
図7 |
補足までに述べるが、被告が提出した乙第8号証90頁図6.8にも示されるように、漏洩磁束型トランスとはトランスの一次巻線側、二次巻線側にそれぞれ直列に等価的にインダクタが挿入されるだけの話である。漏洩磁束性が大きいとは、この直列に等価的に存在するインダクタの値が大きいことを意味する。 |
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電気学会では一次側および二次側に等価的に存在するそれぞれのインダクタンスを一次側漏れインダクタンス、二次側漏れインダクタンスと呼んでいる。
きわめて基礎的なことであるが、インダクタは電力を消費しないのであるから結合係数が低くてもトランスの変換効率が低下するものではない。 |
5 |
測定周波数の問題 |
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被告は被告製品のLo(開放インダクタンス-被告標記はLs)を65kHzで測定した理由について、それをインバータの動作周波数であるからだとしか答えていないが、そもそもこの周波数領域では測定周波数が数kHz異なるだけでLoの値が大きく変わる。このように値がコロコロ変わる周波数において測定した値が信用に足るものではないことは明らかである。
もとより、JIS C 5321には分布容量の影響を受けない周波数において測定せよと書いてあり、被告はJISの定めさえも無視して測定しているのである。
ちなみに、近年販売されている原告製品及び本件特許侵害が疑わしい他社製品のトランスの特性一覧表を図8として示す。 |
図8 |
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被告の主張する、被告製品のLo(被告標記Ls)値だけが他社相当製品に比べて突出した数値であることがわかる。これによっても、被告の示すLoの数値がおかしいことは明白である。 |
6 |
甲第17号証 写真6及び図10のグラフについて |
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被告は甲第17号証11項の写真6及びグラフ(図10)が漏洩磁束を測定したものではない、と述べるが、この写真及びグラフが漏洩磁束を示すものであることは明白である。
この測定は間接的に漏洩磁束を測定するものであり、直接に漏洩磁束を測定するものではないが、コイル間の電圧の差は直接に漏洩磁束の値を示しているのである(第5、2の(5)参照)。 |
7 |
バントパスフィルターについて |
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(1) |
被告は被告製品を構成するLC回路がバンドパスフィルターを構成するものであって、直列共振回路を構成するものではない、と主張するが、もともとバンドパスフィルターと共振回路とはともに非常に近接した技術であり、一方の回路であることが他方の回路であることを排斥するものではない。 |
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簡単に言えば双方の目的がオーバーラップしていてフィルター回路であり、かつ、そのフィルター回路は共振回路であることの方がむしろ一般的である。 |
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(2) |
被告自ら提出したMPS社技術資料には、MPS社のICが直並列負荷共振(SPLR)回路を用いると明示されているわけであり、そもそもここで「共振(Resonance)」という文言が用いられている以上、フィルター回路であると同時に共振回路であることを認めているのである。 |
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また、甲第18号証のMPS社技術資料においても、「MP1010は負荷の共振周波数における効率を最大限にし」と、さかんに共振技術を用いることにより効率を改善していることがPRされており、被告製品に使われている技術が共振技術であることは疑いの余地はない。 |
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(3) |
なお、原告はさらに共振周波数近辺における昇圧効果とフィルター特性についてシミュレーション解析を行なっており、その部分を引用するとよりはっきりしてくる(原告準備書面4、35頁の図14-7)。 |
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原告準備書面4より図14-7 |
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このシミュレーションは直列共振周波数付近の昇圧効果について解析を行なったものである。
並列容量なしというのは直列共振回路を構成せず、共振による昇圧効果を全く有さないフィルター回路の場合であり、並列容量ありとは直列共振回路による昇圧効果を有するフィルター回路の場合である。
ここで上から3番目の図を見てもわかるとおり、直列共振回路を構成している場合は共振回路を構成していない場合に比べてかなりの昇圧効果があることが示されている。
このようなフィルター特性は例として、オーディオ用スピーカーのウーファ(低音)とスコーカ(中音)の間、及びスコーカとトゥイータ(高音)の間に非常に良く使われているものであり、このようなフィルター回路のことを「共振による昇圧により、ターンオフ特性を改善したフィルター回路」というのである。
以上のとおり、直列共振回路でありかつフィルター回路であるというのは実に一般的なことであり、一方の回路であることが他方の回路であることを排斥するものではない。 |