用語解説 液晶バックライト

液晶バックライトの歴史

世界の液晶バックライトの創始者、明拓システム、バックライトのパイオニア

液晶バックライトは背面から液晶を照明するもので、薄型の液晶には必ずと言ってよいぐらいこの技術が使われている。その技術の要である導光板という面光源技術は日本発祥のものである。
この技術を世界で最初に発明したのが明拓システムであり、村瀬新三である。



液晶バックライトは華やかな液晶産業の裏で液晶を支える縁の下の力持ち的存在といえる。
一流企業が取り組む日本のオリジナル技術である液晶と、その一方でこの影のオリジナル技術は日本の産業構造に象徴されるように、とある中小企業の手によって発明され、成長していったのである。

明拓システムの創業は1985年、最初この面光源技術は看板用として発売されていた。
それを当時初めて登場したノート型ワープロに採用を決定したのが松下電器であった。
その後、東芝のDynaBookに採用されたことが明拓システムの運命を決定付けた。
当時のことを覚えている方はたくさんいるだろう。
最初DinaBookの液晶バックライトはEL(エレクトロルミネッセンス)が使われていて非常に暗かったのだ。
それが冷陰極管を使った導光板システムを採用した途端、驚くほどの明るさでたくさんの人々を魅了した。
その後、明拓システムは創業時5人の会社から5年間で従業員150人の会社へと急成長していったのである。
さらに、導光板の発明によって、それに不可欠な冷陰極管という産業まで喚起したのである。現在、世界の冷陰極管市場の主導権を握るのは日本のメーカーである。冷陰極管市場はこの導光板技術によって育てられたと言っても過言ではない。

ところで現在の明拓システムは?

いろいろあって、結局スタンレー電気に吸収合併されており、今はスタンレー滋賀製作所としてその面影を残している。
破竹の勢いで成長していた明拓システムがなぜこのような運命に至ったのか、原因はいくつもあるが、最も大きなことは特許戦略の失敗にあったと言えるのではないだろうか。
確かに明拓システムは多くの特許を出願してはいるが、詳細に分析するとどの特許も決定的なものではなかった。
そのため、特許を逃げるいろいろな導光板の製造法が考案され、最後まで明拓システムが業界の主導権を持っていられなかったことにあるのだろう。
しかし、会社は吸収されたがパイオニアとしての明拓システムと発明者村瀬新三の功績は液晶バックライトの歴史に刻まなければならないと思う。

明拓システムの特許

元明拓システムの特許に関して重要な裁判の結果が出た。
この特許は一度、特許庁から拒絶査定を受けたものであったが、その後審判を経て、高裁の判断が出されたものである。
http://members.tripod.co.jp/nk_wada/jarchive/tokyokoH10gyoke238.html
この特許裁判に勝った意味は、明拓システムにとってはとても大きなものではあったが、時期は遅すぎたと言えるのではないだろうか。
この特許は導光板の明るさを向上させる「反射シート」に関するものである。
当時から現在に至るまで、この反射シートにはほとんど定番のように東レ製のものが使われてきた。
この反射シートを使うということが重大な明拓システムの基本特許の一つであった。
しかし、この特許は特許庁により拒絶され、その結果、多くの導光板メーカーが特許に触れないものとしてこの反射シートを採用し、明拓システムのライバルメーカーとなっていったのである。
時計を逆に戻すことができるのであれば戻したいと誰もが思うであろう。
悔やんでも遅い。明拓システムの名前はもうないのである。
しかし、明拓システムは消えたのではなくてスタンレー電気に系列化されたのである。
当然、現在この特許権を有することになるのはスタンレー電気ということになる。
この特許が復活した意味は液晶バックライト業界にとってあまりにも大きすぎる。
その理由はいうまでもない。当時「明拓システムなど・・・」とたかをくくっていたライバルメーカーは、そのつけが何百倍にもなって跳ね返ってくる結果になるかもしれないからである。

特許戦略で勝利?住友3MのBEF

特許がもともと大企業のもとにあれば守ることも容易である。
反射シートとともに導光板に不可欠な「拡散シート」に関しては、反射シートとは対照的に最初から大きな利益をあげたメーカーがある。住友3Mである。
住友3MのBEF(プリズムシート)は非常に高価なものであったが、大企業ゆえに特許侵害でつぶされることはなかった。
競争相手が全くなかったのかというとそうではなくセキスイなど、何社かがプリズムシートに似たシートを開発した。
一方、大企業とはいえないが、中堅どころで大きな実績を上げたのが恵和(株)である。
これらの二社が、液晶バックライトの輝度向上に果たした役割は大きい。

明拓システムの研究とペンシルインバータの発明

最も重要な発明は導光板の裏側に用いられる反射シートの発明であったが、この他にも導光板の輝度効率を改善するために数々の手法が編み出された。

蛍光管反射シートと漏れ電流

導光板の輝度効率を上げるために冷陰極管の周辺に反射シートを巻くことが必要であった。
この蛍光管反射シートには当初、背面反射シートと同じ東レ製のE-60が用いられていたのであるが、その後、キモトが開発した銀シートに置き換わることになった。
銀シートはPETのフィルムに銀をスパッタリングしたものであり、E-60に比べてそれほど反射率が良いわけではないが、鏡面効果があり、蛍光管の光を良く導光板端面に集光することができた。
その結果、銀シートを採用することによってかなりの輝度効率改善効果が得られたのである。
ところが同時に新たな問題が発生するようになった。
それが漏れ電流と呼ばれるもので、後に液晶バックライト寄生容量と呼ばれることになった。

漏れ電流は有害ではない


漏れ電流の解釈には当初2説あった。
漏れ電流は放電電流であり、ロスを伴う、と寄生容量だからロスではないである。
これについては簡単な実験により寄生容量であることがすぐ後にわかったわけであるが、未だにバックライト関係者の間にはロス説が根強く残っている。
ロス説では漏れ電流は有害なものという認識であるが、それならばロスの結果は発熱となり、さらに本当に放電だとするならば無声放電による相当のオゾン発生が確認されるはずである。
実際にはそのようなオゾン発生も発熱もほとんどない。
ここでクギを刺しておくが、漏れ電流はあくまでもロスではない。
そして、この漏れ電流がロスではなく、冷陰極管の周辺に発生する寄生容量のせいであるということにいち早く気づいた結果が世界最小ペンシルインバータの発明へとつながっていったわけである。


世界最小インバータ1993年

続く・・・・・・


結局・・・弊社も特許訴訟やっちゃいました
台湾製輸入インバータに対してです(^^;
訴状→

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