LCDバックライト用インバータの最新動向と 調相結合トランス型インバータ
1.はじめに
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2. コレクタ共振型インバータ回路と新回路方式インバータ回路 2.1 従来型回路方式(コレクタ共振型)及び新回路方式(他励共振型、ZCS-ON型電流共振)の回路例 写真2は従来型のインバータ回路(写真下側)とし新回路方式のチョークコイルレス方式のインバータ(写真上側)を比較したものである。同じ電力を変換できるインバータ回路同士で比較すれば、新回路方式はチョークコイルがない分、形状面において完全に圧電型を上回る小型化が図られている。
これに対し、他励共振型やZCS-ON型電流共振などの新回路方式ではインバータの回路構成が一段になっており、回路がシンプルになっている上に、変換ロスが少ないという非常に優れた特徴がある(図2、3)。
コレクタ共振型回路ではトランスの一次巻線に与える正弦波を発生させるために、チョークコイルが不可欠となっている。 これに対し、新回路方式の各部の電圧波形と電流波形を見ると(図2,3,4)、新回路方式ではトランスの一次巻線から矩形波状の電圧を加えているが、二次側の共振回路の働きによって出力電流波形が正弦波状として出力されている。 図4のように、他励型というのは一次側の駆動回路に発振回路があり、この回路の駆動周波数が周波数固定式になっているものをいうが、図2の例ではC4とR2によって駆動回路の発振周波数を決めている。 この他励共振型回路における最適な駆動周波数を求めるには、実際に液晶バックライトを点灯した状態における二次側の共振周波数やインピーダンス特性がどうなっているかを測定する必要がある。 二次側の共振周波数やインピーダンス特性は、図6の測定装置を用いてGAIN-PHASE特性を調べることによって求められる。(本装置と同じものがNF回路設計ブロックより発売されることになりました)
この装置では、今まで難しいとされていた液晶バックライトを点灯させた状態での、液晶のバックライトに存在する寄生容量と調相結合トランスの二次側から生じる漏れインダクタンスとの共振とインピーダンスとの関係が視覚的にわかるため、最適な駆動周波数を簡単に求められる。 (図6で使われるトランスT1は他励共振型インバータ回路に使われるトランスをそのまま使って測定する) 他励共振型駆動方式では駆動周波数を自由に選べるので、このようにして求めた理想的な周波数で駆動することによって、コア及び巻線からの発熱を劇的に少なくでき、インバータの変換効率を飛躍的に高めることができるようになる。 一方、他励共振型では、今まで規格化されてこなかった液晶バックライトの寄生容量の違いによって二次側共振周波数が大きく影響を受けるようになるので、液晶モジュールのインチサイズやメーカーごとに異なる寄生容量の違いを綿密に管理することが重要になってくる。 2.3. コレクタ共振型回路による駆動 ところで、コレクタ共振型回路を用いて、この最適周波数で駆動することができるかというと、答は否である。理由は以下に示す。 図7,8はコレクタ共振型回路の場合の、トランスの一次巻線側から見たインピーダンス特性である。(注:図7で測定したものと、サンプルが異なるで、周波数軸が違っており、注意。) コレクタ共振型回路は電圧共振自励型というもので、一次側に共振コンデンサがあり、これと一次巻線のインダクタンスとが電圧共振を起こす。そして、二次側にもトランスの漏れインダクタンスと寄生容量による共振回路があり、これら二つの共振周波数が干渉しあうために、一次側から見たインピーダンス特性は複雑なものになっている。(図8)
この付近の位相を見てみると右下がりになっており、仮に何らかの理由で発振周波数が高くなると、ベース巻線に帰還する位相が遅れ、周波数が低いほうにずれる。逆に何らかの理由で周波数が低くなると位相が進み、周波数が高いほうにずれる。 このようにして、コレクタ共振型回路の発振周波数は位相のゼロ点に落ち着こうとするのである。 ここで、コレクタ共振型回路の共振コンデンサを調整して、先ほどの図6の装置で求めたような二次側の共振周波数付近で発振させることができるかどうか検討する。
逆に何らかの理由で周波数が低い方にずれた場合、位相は遅れるので今度はもっと低い方にずれようとする。 このような原理から、コレクタ共振型回路ではどうしてもこの理想ポイント付近でなんとか発振させることはできても、理想ポイントの真上では発振することができず、理想ポイントを少し外れた高い周波数か低い周波数でしか発振することができないという致命的な問題を抱えていることになる。これに比べて発振周波数を強制的に最も効率の良い理想ポイントに定めることのできる他励共振型の方がなにかと都合が良いのである。 2.4. 他励共振型ではハイ・パワーが出せる
比較のために入力電圧と入力電流のリファレンスのGAINも測定し同じ図に移動した。 図10はトランスの入力電圧に比較して、どれだけの管電流が出ているかを示している。最適駆動周波数では、同じ入力電圧に対して、コレクタ共振型回路での場合と比較して、2倍以上の管電流が得られていることになる。 これは、他励共振型によって駆動すると同じ形状のトランスを用いても、コレクタ共振型回路に比べて2倍以上の電力変換ができることを証明するものである。(実際には4倍程度まで実現でき、実用化されている。) 3.調相結合トランスについて(=ワイヤレス電力伝送の原理) 次に、巻線型インバータにおいて画期的な小型化をもたらした調相結合トランス(写真3)について述べる。5)
調相結合トランスというと聞きなれない言葉であるが、これは1992年トランスの新しい動作原理を発見した弊社が提唱した理論に基づき、その後、通産省の平成8年度補助研究事業6)として集中的な研究が行われた際に通産局の技官によって新たに命名された呼称である。 そしてこの研究により、トランスの性質として従来の閉磁路型トランスの結合原理と異なる結合原理が存在することについて、長年見落とされてきた現象があり、それが電力変換にも応用できるものだということが正式に認められることとなった。 調相結合トランスは漏れインダクタンスを利用した共振変圧器の一種であり、大きな漏れインダクタンスを有し、また、二次巻線上に進行波が発生し、密結合と疎結合とが発生するというものである。 尚、現在この調相結合トランスを用いた新動作原理インバータ回路は世界各国で特許を取得し幅広く製品化されている。3) 3.2. 調相結合トランスの動作原理
これは、磁束の引き込み効果といい、図11のような磁路の両側を開放したようなトランスや扁平に変形させたトランスでも角型閉磁路トランスに匹敵する結合効果が得られるというものである。 次に、調相結合トランスにおいて、なぜ実用的な結合効果が得られているのかということについて、その原理を示す。
調相結合トランスの場合、二次巻線側に必要な容量成分は二次巻線を巻くことによって生じる巻線間寄生容量と、液晶バックライトに存在する寄生容量を巧妙に利用している。 なお、共振周波数の条件が合わない場合などは、液晶バックライトに並列や直列に調整用のコンデンサを付加することによっても共振周波数を調整することができる。 3.3. いろいろな形の調相結合トランス
他励共振型駆動方式と調相結合型トランス(共振変圧器)との組み合わせは非常に適合性の良いものであり、調相結合型トランスの性能を十分に引き出すものであることは理解されたかと思う。
尚、今回は紙面都合上、新回路方式の動作において重要な意味を持つ液晶バックライトの寄生容量について述べることはできなかったが、機会があればこれらの問題についても触れてみたいと思う。 (この寄生容量もワイヤレス電力伝送の共振器-Resonatorに関係する話につながる) 参考文献
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